2023/07/10
今年の夏はエルニーニョ現象で暑くなるという嫌な長期予報がでています。まあ、それでも真冬よりは長くないから、なんとか乗り切れるかなと思うしかないですね(注:私独自の理論;真冬の長さ12,1,2の3か月 vs 真夏の長さ7,8月の2か月)。
<かぜ情報>
6月後半からかぜ症状で受診される方が多かったです。メディア等で言われているように小児の発熱が多く、RSやヘルパンギーナ、その他の風邪も多かったです。大人の風邪症状で受診される方も多く、コロナ陽性の方も増えています。
<伊奈町特定検診の開始について>
6月から毎年恒例の伊奈町の特定検診が始まっています。伊奈町在住の国民健康保険証か後期高齢者証をお持ちの方が対象です(オプション検査となっている胸部レントゲンや大腸がん検診:便潜血などは社会保険に加入の方でも受けられます)。対象者には伊奈町から案内(受診券)が届きます。当院でも接種券が届いた方から予約を受け付けます。今回も11月末までです。期間が長めですので余裕をもった計画で予約できるとは思います。毎年秋以降は予約がとりにくくなる可能性もありますので早めの受診をおすすめします。
<臨時休診のお知らせ>
7月5日(水)は院長が不在のため臨時休診とさせていただきます。
<発熱や風邪症状で受診される際のお願い>
5類に移行後も発熱外来の形態は継続させていただいております。発熱や、熱がなくてもノドの痛みが出現したばかりなどの場合は11:30か16:00の発熱外来(プレハブ診療室)で診療いたします。事前の電話による予約をお願いいたします。熱がない場合、あるいは風邪症状発症後数日経過している場合などは院内の隔離室にご案内することがあります。この場合は上記のような専用の時間帯を設けておりませんがやはり事前の電話予約をお願いいたします。当院に慢性疾患などで定期されていない方でネット予約が入っていることが確認された場合、受診理由について確認させていただくため当院から直接お電話をかけさせていただくことがあります。
<糖尿病コーナー>
前回号で糖尿病による急性合併症と慢性合併症のお話しをしました。急性合併症はインスリンの絶対的な不足によって引き起こされる状態です。著しい高血糖となり、たくさんの尿がでてしまい、ノドが渇き、体重が急激に減少し、直ちに治療しないと意識の低下、場合によっては致命的となります。慢性合併症は急性合併症ほどのインスリン不足にはなっていないものの、当初は症状がなくても長い時間をかけて網膜(目)、腎臓、神経、血管などの障害が徐々に進行してしまう状態です。高血糖による直接的な症状がなくても気がついたら、目や腎臓や神経の障害による症状が出現してしまった、というパターンは良く知られています。ここで約100年前にタイムスリップしてみましょう。1921年にインスリンが発見され、すぐに糖尿病の治療に使われるようになりました。これにより急性合併症への治療が可能になりました。それまでは糖尿病は命の危険と隣り合わせの病気だったのですが、インスリンの登場により急性合併症によって命を落とすケースがアメリカなどでは劇的に減りました。これはもちろんとても大きな進歩でした。ところがインスリンは注射が必要ですし、精製技術が未発達のため長く使い続けることはとても大変なことでした。インスリン製剤が発達して使いやすくなった今でもインスリンはやはり注射製剤ですので負担は大きいです。ですから慢性合併症の予防にはまだまだ不十分でした。さて、インスリンが使えるようになった当時は慢性合併症なんて本当にあるのか?という論争がまだありました。「なんとなく」はわかっていた程度ですが確かな証拠はありません。また、血糖を上げないようにするには食事や運動の管理が一定の効果をあげることはわかっていましたが、どの程度まで血糖を下げておけばいいのか、とうこともわかっていませんでした。ですから根拠もないのに厳しい血糖管理をしていいのか?インスリンで急性合併症が防げるようになったのだからそれで十分ではないか、患者さんに厳しい血糖管理を要求するほうがむしろ問題ではないのかといった議論もありました。まだあります。たとえ、持続的(慢性的)な高血糖が合併症を引き起こすことが証明されていても、治療(介入)によって血糖を下げれば慢性合併症が防げるということの証明にはなりません。これがエビデンスの世界です。「原因 =(イコール) 介入対象」とは言えないのです。この問題は事実上決着したのはなんと1980年代でした。イギリスで1型糖尿病を対象に実施されたDCCTスタディにおいて、インスリンなどで厳格に治療した患者グループは厳格ではない治療グループに比べて合併症の発症を防ぐことができたことがはじめて報告されたのです。糖尿病の治療の歴史は長いようですが今の「あたりまえ」が確立されたのはそれほど前のことではないのです。そして現在も急速に進歩しつづけています。
<院長の日記>
発達障害というものについて近年はかなり理解が深まり、認知もされるようになってきました。代表的なものに自閉、注意欠陥多動性障害、知的能力/発達障害、限局性学習障害(症)などが知られています。そのように診断あるいは判断されて教育や就労での支援を受けるケースが増えています。増えているといってもおそらく同様の状態に相当するケースは昔からあったはずですが、認知(認識)されていなかっただけであったと考えられます。発達障害の中にさらに、「発達性協調運動症」というものがあります。まだ概念もはっきりしているとはいませんが、全般的あるいは特定の運動が特に苦手あるいはできないといったケース、あるいは生活動作(箸を持つ、ボタンをしめる、など)がやはりとても苦手で日常生活にまで影響を及ぼすものまであるとされています。私は幼い頃から運動やスポーツが苦手でした。特に野球やドッジボールなどボールをキャッチしたり投げたりする動作が苦手でした。野球ではバットを振ってボールを飛ばすこともなかなかできませんでした。小学校に行くようになると男の子の遊びでは野球が多かったので放課後はほぼ毎日近所の友達から誘われてしまいます。誘われるというより駆り出されると言った方がいいかもしれません。本当は家でプラモデルでも作っていたいので放っておいて欲しいのに断ることもできずに参加します。そしてうまくできないのでちっとも楽しくありません。学校でも休み時間や体育の時間でドッヂボールが行われましたが、これも嫌で嫌で仕方がない。ご丁寧にも学校の方でドッヂボール大会を開いたりしますが余計なことをしてくれるな、くらいの感覚です。男子では野球やドッヂボールが得意な子が当然のように立場が上になり、私はその逆で自己肯定感の乏しい子の出来上がりです。もともと背が低い上に気が弱いので毎日が苦痛、特に学校に行くのはつらかったです。人の顔色を伺ってうまく立ち回ることでなんとか生き延びることができました。親からは気が弱い子として心配されていたのは自分でもわかっていました。この仕事に従事するようになり上述の発達性協調運動障害の概念を知り、自分もそうであったかもと思うようになりました。全ての子供の5%以上は該当するとされていますので決して少なくありません。私はまだ軽症の方かもしれませんが、いずれにせよ発達障害があると周囲より遅れる、あるいは周囲とうまく行かないことにより自己肯定感が低くなりますますつらくなってしまいます。ひどくなれば学校に行けなくなってしまいますし、本来なら頑張れるところもますます頑張れなくなってしまうという悪循環になってしまいます。近年は「支援教育」の考えのもとにその子の成長に適切な環境の整備が行われるようになってきました。そのあたりがうまく行くと、本人の幸せ、本人なりの成長、さらには自立にもつながる可能性があります。我が国では少子化が問題になっていますが、数だけではなく、適切な充実した教育により社会で子供を大切に育てるということもとても大切だと思います。しかし学校の先生は忙しくなるばかり。ここはやはり先生の業務をなんとか効率化して負担を減らしていただく「教育改革」が本当に重要だと思います。私も単に気が弱いだけでなく自己肯定感の低さがさらに消極的な性格になるのに拍車をかけてしまっていたのかもしれません。