2023/03/07
春は案外早くやってきそうです。感染の状態も落ち着いてきており、どうかこのまま穏やかな春を迎えたいところですね。
<かぜ情報>
発熱やかぜ症状で受診される患者様は減少傾向が続いています。コロナ陽性者の数も減っていますしインフルエンザも懸念されていたよりは少なく推移しています。むしろ減っているようです。一方、ウイスル性胃腸炎で受診される方はまだ多い傾向です。
<発熱外来の場所と時間の変更について>
1月中旬から発熱外来の体制を大幅に変更しました。まず、駐車場奥の仮設診療棟で検査などを実施します。また発熱外来の時間を午前は11:30~12:00、午後は16:00~16:30とさせていただき、その時間帯は他の診療は一時中断となります。発熱外来以外の通常診療希望の方はご留意くださいませ。
以前から申し上げていることですが、かぜ症状での受診予約はネット予約ではなく直接の電話予約をお願いいたします。ネット予約で来院されても、発熱外来枠が空いていない場合には改めて別の時間枠へのご案内をお願いすることがあります。
<糖尿病コーナー>
日本は世界でトップクラスの高齢化社会になってきています。少子化とともに社会構造に関わる大きな変化です。その背景には日本の医療制度の恩恵はあると考えられています。他にも国民皆保険、検診制度、清潔な環境、栄養状態の改善、セーフティネットの発達なども挙げられるでしょうか。平均寿命は延びましたが、それとともに増えてしまった病気もあります。認知症、心不全、腎不全などはいずれも病気という要素だけでなく「機能低下」という側面もあります。かつては感染症や癌によって「寿命」を迎えていたのが、それらを克服できるようになってきた先にあるのがこれら「機能低下」の問題です。脳(神経)、心臓、腎臓は加齢とともに個人差はあるものの機能低下は避けられません。長生きになってしまった故に出てきた新しい問題ですね。糖尿病についても同じようなことが言えます。血糖を下げるホルモンであるインスリンのすい臓からの分泌能力も残念ながら加齢とともに低下していきます。また、インスリンが効力を発揮する筋肉も徐々に落ちていきます。将来的にはすい臓の働きを再生医療や移植医療で治療する時代はくるかもしれませんがまだ先の話でしょう。ご高齢の方の糖尿病は上記の理由で治療が難しくなることが多いのですが、治療方針は若い人と決して同じである必要はありません。糖尿病の治療はある意味、時間との戦いでもあります。糖尿病の慢性合併症は血糖がどれたけ高く、かつその期間がどれだけ長く続いたのかという2つの要素が大きく影響します。若い人で糖尿病になってしまった場合にはその後の長い時間も考慮しなければなりません。従って、その分、より厳しい血糖の管理が必要になります。高齢になってからでは話が変ります。糖尿病の合併症が進む前に天寿を迎えるならば若い人ほどは厳しい血糖の管理はしなくてもいいかもしれません。むしろ厳しくしすぎて栄養状態が悪くなるデメリットも考慮する必要があります。人は誰でも年を重ねやがて天寿を迎えます。私に言われなくてもわかっていることですね。この天寿までどう過ごすか、これが先ほど申し上げた時間との戦いを意味するのです。しかし、高齢だからといっていくらでも高くていいというわけでは決してありません。現時点で血糖が高いというだけでも不都合は起き得ます。感染症への抵抗力が落ちたり、極端な場合は脱水や意識を失うことなどの危険性もあります。大切なのは定期的な検査をうけながら長期的、短期的なメリット/デメリットを常に考えておくことだと思います。
<院長の日記>
年末年始のお休みで久しぶりに戦艦のプラモデルを作りました。正確には分類上は戦艦ではなく駆逐艦です。その名は「雪風(ゆきかぜ)」といいます。小型の艦船ですが、1/350のスケールのため大きいサイズの完成となります(全長は約35cm)。塗装済みかつ、接着剤不要で誰でも簡単に作れるようになっており、ディテールまでよくできています。今は透明ケースに入れて自分の部屋に飾っています。雪風は太平洋戦争当時の日本の駆逐艦です。50隻以上(100隻近く?)もあった駆逐艦のうち終戦まで唯一沈まずに残ったため奇跡の船と言われております。有名な激戦のほとんどに参加しているのにも関わらず生き延びているのです。なぜ沈まずに済んだか、ということについては諸説ありますが、幸運と乗員の力量の両方によるだろうとうのが一般的な説です。縁起がいい船としてプラモデルや写真を飾りたくなります。 子供の頃は沢山の戦艦のプラモデルを作りましたが、駆逐艦にはずっと興味を持っていました。戦艦のプラモデルでは「大和」や「武蔵」、「長門」、「伊勢」、空母では「赤城」「翔鶴」「大鳳」「信濃」などが人気の定番作品でしょう。大きいですし、カッコいいです。次いで巡洋艦の「最上」「高雄」などもカッコいいですね。一方、駆逐艦は小型で決してカッコいいとは言えないでしょう。しかし、いかにも仕事ができそうな、機能美といったものが感じられて私は好きでした。駆逐艦の明確な定義はないのですが、当時は水雷艇や潜水艦を見つけて魚雷で攻撃する、あるいは潜水艦から戦艦や空母を守るという役割を意味していたようです。駆逐艦(特に日本海軍の)は小型ですので高速で移動出来、小回りがききますが大きな火器戦力は持たないため対艦、対空戦闘力では劣ります。分厚い装甲もないので防御能も弱いです。細長い船体をしており、魚に例えるなら戦艦がマグロで駆逐艦はサンマといったところでしょうか。太平洋戦争当時は洋上での戦いは航空機が主役となったため空母が攻撃力の要でした。しかし空母自体は防御力が弱いため駆逐艦による空母の護衛はとても大切な役割です。戦争後半には連合艦隊は敗戦を重ねるようになり、駆逐艦は破損した戦艦や空母の救援や沈没して洋上に漂流した兵の救難にも活躍しました。当時の海戦の記録や映画では沈没してから駆逐艦に助けられた、という記述やシーンを多く目にします。雪風も休む暇なく働きました。駆逐艦は英語では「デストロイヤー」と言います。どちらかというと防護や護衛に近い「駆逐」よりもより積極的な攻撃の役割が「デストロイヤー」からは感じられますね。また、こんな話もあります。戦艦や空母の乗組員は「兵士」で、とくに大型戦艦へ搭乗することはそれだけで誉れとされていました。一方で駆逐艦の乗員は「兵士」というより「船乗り」で、気性は荒々しいでのすが、厳しい統制と見事なチームワークがあったとされています。自らを犠牲にして大鑑を守り、地味な仕事をこなしていく、そんな雰囲気が船の形からにじみ出ているような気がしてそこに私は惹かれたのかもしれません。前述のように50隻以上はあったはずの日本の駆逐艦が1隻を残して全て沈められてしまったこと自体、言葉も出ません。本当に犠牲になってしまったのです。この戦争の凄まじさが表れています。一方、雪風は戦後、中華民国に引き取られます。中華民国は中国共産党に敗れて台湾に移りますがその時に蔣介石が雪月に乗って海を渡ったなんて言う話もあります。共産党との戦いでも活躍しますが、さすがに年月が経てからは引退しました。日本に返還される話もでましたが、老朽化は避けられず、台風による暴風雨で大破し惜しくもその波乱に満ちた生涯を終えました。ミリタリーもののプラモデルを作るときにいつも思うのですが、やはり戦争の道具です、プラモデルを作って眺めていること自体、本当は不謹慎なことなのでしょうか。特にこんな時代では・・・。