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金崎内科医院

〒362-0812 埼玉県北足立郡伊奈町内宿台3-40

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院内報2022年3月1日号を掲載しました

今年は年が変わってからあっという間の2か月だったように感じます。ご存知のような状況ですし、寒かったですし。春には一息つかせて欲しいと切に願うばかりです。

<かぜ情報>

やはり3月初めの時点でも新型コロナウイルスと判明するケースがとても多いです。新型コロナウイルス感染の場合通常の風邪症状と区別がつきにくいのですが、一方で抗原検査やPCR検査での陰性の場合も一定の割合でいらっしゃいます。それ以外の風邪の可能性が考えられます。
発熱で受診される場合の他、嘔吐や下痢が見られる場合もやはり時間指定での隔離室への誘導などの対処を引き続きとらせていただいております。行政からの指導のもとでの、時間的及び空間的な隔離をしたうえでの診療となりますので、混雑した場合には予約が埋まってしまうことがあります。

<新型コロナウイルスワクチン接種について>

新型コロナウイルスワクチンの3回目の接種が始まっています。昨年の1、2回目接種同様に伊奈町では行政で一括で予約を受け付け、各医療機関に割り当てる仕組みになります。当院でも割り当てに従って実施をする予定で、当院で直接予約を受け付けることはできません。まずは接種券が住民票のある各自治体から送られてくるまでお待ちいただくことになります(当院に直接申し込もうと電話をかけてくる事例が毎日のようにありますが、申し訳ありませんが受付はできません)

<糖尿病コーナー>

今回はやや専門的なお話しになります。前回ご紹介した新しいお薬の話とも関連しますがより専門的な内容ですので、もっと詳しく知りたいと思われ方だけお読みいただければ存じます。血糖が高くなるとどのようにしてインスリンが分泌されるかの仕組みのお話しです。
ご存じのように血糖値を下げる作用のある物質がインスリンです。すい臓のランゲルハンス島のβ細胞から分泌されます(最近ではランゲルハンス島という言葉は省略されることが多く、単にβ細胞ということが多いです)。インスリンは少ない量をずっと持続的に分泌している「持続分泌」と血糖値が高くなったときにそれに応じて分泌される「追加分泌」の2つの分泌が組み合わされています。では、血糖値が高くなったときにどのようにしてインスリンの追加分泌がなされるのでしょうか?簡単に言うと、β細胞自体が血糖を検知しているのです。まず、β細胞が血糖を自分の細胞内に取り込みます。細胞というのは何でもかんでも細胞のなかに取り組むのではなく、必要なものを選び、それぞれ専用の入り口を使って物質を取り込みます。糖(ここからは「グルコース」と呼びます)を取り込むβ細胞の取り込み口をGLUT(グルット)と呼びます。GLUTから細胞内に入ったグルコースは代謝を受け、ATPというエネルギ―を媒介するものが産生されます。これは細胞の表面にあるK(カリウム)チャンネルというところに作用し、このチャンネルを閉じてしまいます。これにより細胞の外にあったKが細胞内に入って来れなくなります。カリウムが入って来れなくなるとどうなるかというと、膜の外と内側の帯電の差(電位いいます)が変化します。これにより今度はCa(カルシウム)のチャンネルが開いてCaが一気に細胞内に入ってきます。Caの流入というのは大きな信号(シグナル)になるもので、これにより細胞内にもともと蓄えられていたインスリンそのものが細胞の外に放出されるのです(インスリンを蓄えている袋のようなものが細胞の膜に近づいていき、細胞膜と融合して放出されます)。ここまでをインスリン分泌の「惹起経路」とよびます。また、これを補う経路として「増幅経路」というものがあります。細胞内へのCaの流入後の反応の強さや速度を上げるものです。この増幅経路に関係する物資がいくつかあり、そのうちの一つが「インクレチン」です。これまでも何度もこの場で挙げたことがあるので聞いたことがあるのではないでしょうか。前回取り上げたGLP-1受容体アナログという分類のお薬もこのインクレチン作用があります。これによりインスリン分泌の増幅経路を介してインスリン分泌を増やすのです。現在、わが国で多く処方されているDPP4阻害剤も間接的にインクレチン作用を増強させるものです。インクレチン作用のいいところの一つは血糖が高いときだけインスリン分泌を促進するので低血糖のリスクがないというところです。糖尿病になって高血糖が持続するとこのβ細胞からのインスリンの分泌が減ってしまいます。原因は完全には解明されていませんが、高血糖→インスリン分泌低下→さらに高血糖という悪循環になってしまいます。さらにこの状態が長年続きますとβ細胞の数自体も減ってしまい、インスリン分泌能の回復力が失われていきます。長年、糖尿病治療を続けても高血糖がなかなか是正されないと、むしろさらにお薬が必要になったり、インスリン注射が必要となったりすることの理由になります。β細胞の機能や数が失われる前にできるだけ早いうちから治療が必要なのです。

<院長の日記>

こちらでコロナが大変だ、寒くて大変だ、と言っているときにウクライナでは本当に戦争が始まってしまいました。「まさか」という声が多く聞かれました。「まさか」という声を発するときには、人間の理性を強固に信じているという背景があるのだと思います。人(指導者)は他国民であっても人を殺すのをよしとはしないはずだ、もし悪いことをしても必ず大きな代償を払うことになるのを知っているはずだ、世界や他人がどう思うかを考えると悪いことはできない、はずだ・・・など。西欧の文化や文明はこれまでは圧倒的でした。圧倒的な技術力と生産力で世界各地を植民地化してしまいました。一方でその思想を押し付けてきた側面もあります。西欧やアメリカにおいて理性への信仰は根強く、文明発展を支えてきたと同時に自分たちの行動の裏付けのようにしてきたとも言えると思います。フランス人は「自由」「平等」「博愛」の精神を革命などの大きな犠牲を経て世界に先駆けて実践しているという自負があると聞きます。しかしいわゆるこれら「理性」はそもそも人間が根源的にもつもの(哲学的には「アプリオリ」といいます)なものなのでしょうか。私は理性は人間が「発明した」ものでもあると思います。つまり誰もが根源的に持っているとは決していいきれず、それを当たり前のことと思うのは止めたほうがいいと考えます。西欧では人間の理性、社会構造は常に進歩、発展をするという考え方も支配的でした。ヘーゲルやマルクスなどがその代表でしょう。2つの大戦を経ていったんは自省的にはなったかもしれませんが今だに理性に対する信仰は続いているかむしろ強固になっているように見えます。そしてこの場合理性は「正義」にもなってしまいます。しかし、正義についていけない人々も一定数いるはずです。アメリカのトランプ支持者を構成する人にも多いようです。また西欧の価値観として作られた(発明された)いわゆる「民主主義」を国家の体制にしていない国もかなりあり、むしろ台頭さえしてきてその対立が深刻になってきている感もあります。自分たちの国をいかに発展させ、守っていくかというときにはこの事実はますます重要になってくるように思います。百歩譲って理性や民主主義がもっとグローバル化しても自分の欲望のためなら人を殺しても、場合によっては自分の国の人々も犠牲にしてもいいと考える指導者が今後も現れる可能性はあります。むしろそのようなサイコパス的な人ほど指導者になりやすいように思えます。「理性」が正義となるとこの議論さえできなくなるばかりか、正義の名のもとについていけない人を排除してかえって危険な状態なってしまうことを個人的には危惧しています。では、どうすれば国を守れるのか。私なりに考えはありますが紙面の都合でまたいずれ・・・。