2019/08/01
梅雨が長くていやだな、と思っていましたがそうも言ってはいられなくなりました。とにかく暑いですね。激しい暑さを表現する日本語はいろいろあります。「肌がやけつくような」という表現などが挙げられますが、英語でも似たような表現がありました。先日英語のネイティブスピーカーに教えてもらいました。”blistering weather(ブリスタリング・ウエザー)”と言います。ウエザーは天気という意味でお分かりかと思いますが、ブリスタリングは「水ぶくれができる」というのがそもそも意味で医学英語に近いです。日本語には「焼けつくような」と翻訳されてしまいますが、本来は肌が焼けて水ぶくれができるほど、というニュアンスになります。こちらの方がより激しく感じますね。
<かぜ情報>
小児で手足口病とヘルパンギーナが流行しています。ほとんどの場合は2,3日で自然に治りますが、ノドが痛くて水分が摂れなくなるときは要注意です。基本的に小児の感染症ですが大人がなると症状はより重くなります。子供がかかった場合は親御さんもご用心ください。
<糖尿病教室開催のご報告>
7月27日(土)17:00から、恒例の糖尿病教室を開催いたしました。今回は院内ではなく県民活動センター(けんかつ)に場所を移しテーマは糖尿病性足病変としました。会場が大きくなったせいか、それともテーマが興味深かったせいか、予想以上の事前申し込みをいただき、結局会場の大きさを2回変更し50人以上の方にご参加いただきました。ありがとうございました。私が講演した内容のまとめ(抄録)を今回の「糖尿病コーナー」にしますのでご参考ください。
<伊奈町特定検診のご案内>
例年通り、6月10日より伊奈町の特定検診が始まっています。期間は9月末までです。対象者は伊奈町の国民健康保険の保険証か後期高齢者の保険証をお持ちの方になります。対象者には役場から案内が郵送されていると思います。当院では完全予約制で午前に実施いたします。毎年期間の最期の9月は予約で混雑しますので早めの受診をお願いします。
<夏季休診のおしらせ>
8月11日(日)~8月15日(木)は夏季休診とさせていただきます。(ちなみに11日と12日はもともと日曜祭日になっています)
<糖尿病コーナー>
糖尿病を放っておくと足がくさるぞ、という脅し文句があるように糖尿病で足が壊疽を起こしたり、場合によっては切断に至ることもあるということは案外よくしられているようです。かなり怖く感じるようようでインパクトは強いからでしょうか。さすがに最近は前述のような脅し文句を言う医者は少なくなったと思いますが、かえって怖がらせすぎて正しく理解されていないように思います。これは医療者の責任でもあると思います。
糖尿病で足に何等かの弊害といいますか病変が発症してしまうのを正式には「糖尿病性足病変」といいます。数多くある合併症の一つともいえますが、原因はそのさまざまな合併症が複雑に関係しています。とても大雑把に言うとその中でも神経症と動脈硬化が最も関係しています。糖尿病の神経症というと手足のしびれとイメージされる方も多いと思いますが、神経症がかなり進行してしまうと、しびれどころか感覚そのものがなくなってしまいます。痛みを感じないので、もし、傷や水虫ができても痛みもかゆみ感じない、自分で足に何があっても気付かないのです。これはとてもやっかいなもので足病変の発見の遅れにつながります。動脈硬化についてですが、糖尿病は動脈硬化の大きな危険因子です。足の血管に動脈硬化が起きて進行する、動脈が狭くなって血流障害が起きます。「血の巡りが悪い」と、当然傷は治りにくくなりますしむしろ悪化しやすくなります。他にも要因があります。血糖が高いと免疫力が低下するので、感染しやすくなります。傷からばい菌が入りやすくなるのです。また神経障害には痛みの神経だけではなく自律神経や一部の運動神経も障害されます。すると足の皮膚の乾燥や湿気の調節ができなくなりますし、足の筋肉が萎縮などして足自体が変形して足に不自然な負荷がかかります。これらが合わさって足の病変となるのです。なぜ体の他の場所ではなく、足なのか、という疑問がありますが、神経障害は体の中心から一番、遠いとことろ、すなわち足から始まります。また血流障害も心臓から一番遠い足でひどくなる、というのもイメージしやすいのではないでしょうか。さらに他の合併症、網膜症が進むと視力が低下するので痛みも分からないし、傷を目で見つけることもできなくなる場合があります。以上、かなり怖い話をしてしまいました。でも、すぐに怖がることはありません。足病変は糖尿病の合併症がかなり進んでから初めて発症します。ある程度の長い年月にわたり血糖が高い状態が続くことで起きるのです。ですから、糖尿病と診断ばかりの人が足のことを心配するのは早すぎです。とはいっても合併症がどれだけ進んでいるのは気になるところでしょう。ましてや神経障害や動脈硬化は血液や尿検査などですぐにわかるものではありません。そこで参考になるは他の合併症です。例えば腎症や網膜症です。腎症は検尿と血液検査である程度進行が把握できます。網膜症も眼科で診てもらえばすぐに診断してもらえます。足病変と腎症や網膜症は一見、関係なさそうですが、たいていの場合、合併症は同時進行していますので、大いに参考になるのです。実際に腎症の進行とともに足病変も進行していた、という報告もあります。
足病変の進行の仕方ですが、いきなり足が腐る(「壊疽(えそ)」といいます)になるのではなく、たいてはその前の段階の潰瘍が起きます。いったん潰瘍が起きるとこれも大変ですが、とにかく早期発見が大切です。そのために自分で日頃から足をチェックする「セルフチェック」、足病変のリスクが高いかたの足を医療者がチェックし予防策を講じる「フットケア」が重要になります。また水虫やたこ、うおのめといったものが足病変進行のきっかけになることが多いので、足病変の危険度(リスク)が高い場合には皮膚科などで治療を受けておくことをお勧めします。いったん発症してしまった場合の治療ですが、潰瘍や壊疽が起きてしまうと内科的治療だけでは難しく、皮膚科や形成外科、整形外科、循環器科など多くの分野での専門的対処が必要になります。最後に、足病変が今、増えているのかという疑問ですが、明確なデータはありません。しかし、概ね減ってきているとう見方が支配的で私自身もそのように実感しています。またわが国の発症率は欧米の10分の1と言われています。足病変は確かに怖いですが、すべての方が同じように恐れる必要はなく、日々の糖尿病の治療を継続していくことを何よりも大切にしていただきたいです。
(紙面の都合で今回は「院長の日記」はお休みです)