2021/11/11
前号では下がり続ける不安についてちょっと触れましたが、思いの他下がり続けるのが長く続いています。
「ゼロ」は無理にしてもなんとかこの状態くらいで維持してくれたらと思います。ここ半年で分かったのは上がるも下がるも完全にウイルスの都合だということです。そのうえでもワクチンや感染対策は波を低くしたり、人命を守ることに寄与するのではないかと思われます。個人的には毎日諸外国の状況を注視しています。現時点ではヨーロッパの波さえ治まればあとは期待できるのではとみているのですが。
<かぜ情報>
気温の低下のせいか、かぜ症状で受診される方が多くなっています。新型コロナウイルスの検査もいたしますがほぼ陰性です。また、小児を中心にウイルス性胃腸炎の流行がみられます。これらの状況は「コロナ前」に近い印象です。しかし、今もマスク着用を始め感染対策をしていても新型コロナウイルス以外の感染症(かぜやウイルス性胃腸炎)が流行するということにウイルスの恐ろしさを感じます。願わくばインフルエンザが流行しないで、というところです。新型コロナウイルスは減ってはいますが当院でも引き続き感染対策をしながらの診療を継続させていただきます。発熱で受診される場合の時間指定や隔離室への誘導なども続けます。何かとご不便をおかけしますが、ご理解の程、よろしくお願いします。
<伊奈町特定検診の開始のお知らせ>
7月から毎年恒例の伊奈町の特定検診が始まっています。伊奈町在住の国民健康保険証か後期高齢者証をお持ちの方が対象です(オプション検査となっている胸部レントゲンや大腸がん検診:便潜血などは社会保険に加入の方でも受けられます)。今年は11月末までとなっていましたが町の方針で12月11日まで期間が延長されました。まだ予約枠は空いていますので早めの予約をおすすめします。
<糖尿病コーナー>
「サルコペニア」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。簡単に言うと「筋肉の欠乏」の状態です。筋肉量は個人差がありますし、加齢とともにどうしても筋肉は減ります。高齢になってもボディービルで鍛えている人の写真をみると、確かに筋肉はあるかもしれませんが明らかに若い人に比べて見劣りするのは致しかたのないことです。「サルコペニア」では筋肉量の低下により健康に様々な影響が出てくることです。筋肉量が低下すると動くのが億劫になり、筋肉を使わなくなるのでますます筋肉量が落ちます。動かないことで認知機能の低下が起きやすくなりますし、日常動作もできなくなってしまい、介護を必要とするようになります。また転倒もしやすくなり、場合によってはそれによる骨折で大きく身体機能に影響が出てしまいます。糖尿病も悪化する可能性があります。血糖を下げるインスリンはすい臓から分泌されますが、実際にインスリンは主に肝臓と筋肉に働きかけることで血糖を下げるのですが、その筋肉が減ってしまうとインスリンが効きにくくなってしまい、血糖が下げにくくなってしまうのです。ですから、加齢とともに減ってくる筋肉をいかに維持するかということがとても大切なのです。サルコペニアと判断する明確な基準はありませんが、参考となる指標がいくつかあります。有名なのが「指輪っかテスト」です。両手の人差し指と親指でわっかを作り、自分のふくらはぎをその中に囲むようにあててみます。もして両手が届かず、輪っかが結べてしまえばサルコペニアになる危険性があります(若い女性で見た目重視のために食事を減らして足が細くなるように努力している人がいますが、そのまま続けるとかなり遠い将来、危ないかもしれません)。サルコペニアに治療薬はありません。やはり運動と食事になります。特に大切なのは下半身や体幹の筋肉です。例えば、太ももの筋肉は人間の体の中で一番大きいのでここの筋肉を維持または増やすことが最も効果的です。転倒の予防にもなりますし、膝の感染の負担を軽くしてくれます。体幹、といってもピンとこないかもしれませんが、背中の筋肉は外からは見えない体の中の筋肉です。具体的はやはり筋トレです。最近ではレジスタンス運動ともいいます。方法はいろいろありますが、やはり大腿を鍛えるのはまずはスクワットです。なるべくゆっくり行うのが効果的です。もう一つお勧めが「つま先だち」です。ふくらはぎの裏や体幹の筋肉もきたえることはできます。体幹の筋肉は例えば片足立ちでも鍛えられます。私も毎日、片足立ちをしています。特別にその時間を設けるのではなくたまたま立っている時間があったらその時に片足だちをするだけです。散歩など歩くことも足の筋肉維持には役立ちますが、これは筋トレではなく「有酸素運動」に分類されます。筋肉の維持だけではなく心肺機能の維持向上に効果的です。そしてこの筋トレと有酸素運動の両方を行うことが理想的です。ここに挙げた筋トレは自宅でもどこでもできます。天気が悪いから、といいわけできませんね。サルコペニアに対する食事についてですが、やはり筋肉をつくるタンパク質を摂ることが大切です。お肉や乳製品に多く含まれます。お肉は炭水化物よりも消化に負担がかかるので加齢とともにどうしても摂取量が低下してしまい、炭水化物の比率が増えてしまいがちです。比較的消化しやすい魚の肉や卵もとるなどして工夫していただければと思います。魚の油などは動脈硬化の予防にも効果があります。
<院長の日記>
子供の時に親の前で自分は皇族に生まれたかった、と言ったことがあります。親心も知らない無邪気な気持ちからの発言ですが、その時、父に、「皇族ってそんなにいいものではないと思うよ」というふうに言われたのを覚えています。あまり自由に振舞えないことのつらさを言っているのたなと理解はしました。秋篠宮さまの長女のご結婚でいろいろな意見がでています。ネットやテレビでは言いたい放題の状態です。皇室についてここまで自由に意見を言えるようになった、というか言えてしまうようになったのも時代の流れでしょうか。今回のご結婚については特に触れませんが、ひとつ気になる発言があります。それは「国民の税金で皇室を維持しているのだから、云々・・・。」といったものです。国民が税金を払っているのだから無駄遣いや一部の人の恣意的な行動は慎んでほしいという内容なども含まれます。日本人にとって、皇室とは?という議論は尽きることのない大変に複雑なものであることは間違いありません。そもそも天皇を容認しない思想も存在します。これも個人の自由です。ここでいったん話を変えてみます。いきなりですが、私は人は誰かに臣従したがる修正をもつものだと思っています。たまたまNHKの「100分で名著」で取り上げたル・ボンの「群衆心理」でなぜ独裁者やカリスマ指導者に人々が惹きつけられるのか、という理由として同じよう記述を紹介していました。しかし、それよりももっと深い人間の根源的な欲求として人に臣従する喜びというものが人にはあると思っています。日本を含め、世界は近代に至るまで、身分制度の時代が続きました。力の強い個人や家系が力の弱いものを支配するとうことで成り立っているとも解釈できますが一方で臣従する方も喜んで、あるいは本心からそうしているという側面もあったと思います。なぜかはわかりません。特定のグループに所属できる安心感もあるかもしれません。臣従するということは自分に制限を課すことかもしれませんが一方で日々の生活に迷いがなくなりかえって楽になるのかもしれません。もちろん、臣従する存在は時として危機や災厄をもたらす可能性も多いにあります。明治から終戦までの天皇制はまさにそうでした。天皇を政治利用したらロクなことが起きないのははっきりしました。一方で現在の皇室は国民が「臣従」しているとは言えませんが「頂く」存在になっていると思います。憲法で「象徴」となっていますが国民が「頂く」存在でいてくれているということ、またはそれを演じていただいているといったら言い過ぎでしょうか。もちろん税金は大切ですが、皇族の果たされている「お努め」を税金という言葉でストレートに評価するのには抵抗感を覚えます。