2021/04/16
ほんとうに暖かくなりました。もう雑草が生えてきています、桜も咲くわけですよね。冬が終わっても数字に翻弄される毎日は続くようです。どうやら増えるものはいつか下がり、下がったものはまた上がるということのようです。下がりきってしまうとその後に上がることが分かっているので、ゆっくり下がって欲しい、そうすれば前向きな気持ちでいられる期間も長くなるのに、などとひねくれた考えになってしまいます。
<かぜ情報>
風邪症状で受診される方が少ない状態は続いています。例年、4月以降は保育園に入園したばかりの園児やそのご家族がかぜにかかることが多いです。また年度の変わりで環境が変わって体調を崩しやすくもなりますのでご注意ください。
<新型コロナウイルスのワクチン接種について>
診療中にもよくお問い合わせをいただくようになりました。ご存じの通りワクチンの供給の見通しが不透明なこと、ファイザー製のワクチンは超低温保管のため拠点となるところに保管が必要となることなどの理由でまだ不確定なことが多いのですが、町の広報ですでにお知らせが出ているのを含めると伊奈町では以下のようになりそうです。まず、高齢者のなかでも75歳から摂取を開始するようです。65歳以上で開始すると予約が殺到することが予想され、まずはよりご高齢の方からということのようです。また、予約は町で受付け、町の方で各医療機関に割り振ることになります(予約開始は接種券が手元に直接届いてからです)。前述のように伊奈町では各病院や診療所で手分けをして実施し集団接種などは想定していません。当院も接種に参加の予定ですが、待合室のスペースや通常診療の患者様との接触を考慮すると他の大きな規模の医療機関よりは接種可能人数に限りがでてしまいそうです。また、市町村が実施主体となり、ワクチンの配送や管理の都合もあるため、他の市町村の患者様につきましては在住の市町村内で受けていただくことになりそうです(いわゆる市町村間の「乗り入れ」は現時点では難しい見通しです)。
<糖尿病コーナー>
「クリニカル・イナーシャ」という言葉が糖尿病治療を議論する上でよく聞かれるようになりました。「クリニカル」は臨床つまりは医療現場といった意味です。「イナーシャ」は英語の”inertiaからきていて「慣性」「惰性」といった意味です。つまりクリニカル・イナーシャは改善の余地があるのに現状を変えずになんとなくそのままにしてしまっているという意味です。医療者に対する反省を求めるやや厳しい姿勢に聞こえます。糖尿病治療においては目標の血糖コントロールに達していないのにそのままにしてしまっていることに当てはまります。ただし、どのような状況での発言かによってその内包する意味や背景が違ってきます。例えば、糖尿病治療薬を推奨する状況、つまり製薬メーカー主催の講演会などで使われるとします。実際、このケースが多いのですが、クリニカル・イナーシャにならないように、積極的に治療に介入していきましょう、つまり積極的に薬を使いましょう、という話になります。実際に治療開始当初から積極的に薬を使ったほうが良好な血糖コントロールを良好に維持でき、合併症の発症が少なくて済むというデータの報告もあります。しかし、これは現場に携わる者の言い訳かもしれませんが、薬に頼ってばかりでは本来の糖尿病治療とはちょっと違ってくるように思われます。糖尿病治療にはやはりご本人の行動、つまり食事や運動、その他の生活習慣が大きく影響するため、あくまでもご自身の意識や自覚を維持したうえでの積極的なお薬の使用でなければいけないと私は思います。生活習慣の改善に一緒に取り組むことを療養指導と言いますが、クリニカル・イナーシャにならないように積極的な療養指導をしましょう、とうことであればそれは全く正しいと思います。しかし、このあたりは実際には難しいところでもあります。また、お互いに本気になるとどこか息苦しく、いずれ疲れてしまいます。結局はクリニカル・イナーシャにならずに一方で長続きして自然な形でうまくいくようになるべく持っていきたいですね。ちょっと回りくどい言い方になりましたが、医療者も自戒をしているのですよ、ということを今回は聞いていただきたかったのです。